大判例

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広島地方裁判所 昭和26年(行)16号 判決

原告 有限会社備南繊維工業所

被告 福山税務署長

一、主  文

原告の請求中被告名義の昭和二十六年六月二十八日附別紙通知書の無効確認を求める部分はこれを棄却する原告その余の訴はこれを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は「一、被告名義の昭和二十六年六月二十八日附別紙通知書は無効であることを確認する。二、被告は福山税務署法人税係長岩崎次登並びに同署法人税係藤川弘を罷免せよ。三、訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として、(一)原告は被告に対し昭和二十四事業年度分法人税に関し昭和二十六年五月五日再調査の申立をしたところ、被告は同年六月二十八日附別紙書面を以て右申立を棄却する旨通知してきたが、被告は右決定をする際何等事実調査をしないにも拘らず右書面には「更に再調査致しました」と虚偽の記載をしているので該書面は無効である。よつてその確認を求める。(二)又被告が監督する同署法人税係長岩崎次登は職務怠慢で原告に対する法人税過納金の支払を遅延し、同係藤川弘は職権を濫用して原告に昭和二十三年度は損失があるのに利益所得金四万円と修正申告をせよと強要して義務なき事を行わしめようとし、いづれも公務員としてふさわしからぬ者であるから、原告は憲法第十五条に基いて被告に対し右両名の罷免を求めると述べた。

被告指定代理人は請求棄却の判決を求め答弁として、被告が原告主張の再調査の申立に対し、その主張の如き書面を以て棄却の決定をしたことは認めるけれども被告は再調査の上決定をしたのであつて、何等違法の点はない。又現行法令上税務署員の罷免を訴求することを認めた規定はないから原告の罷免請求は失当であると答えた。

三、理  由

被告が原告の昭和二十四事業年度分の法人所得に対する再調査の申立に対し昭和二十六年六月二十八日棄却の決定をし別紙の如き書面を発したことは当事者間に争がない。

原告は右書面には「更に再調査致しました」とあるが、被告は事実再調査をしていないから、かかる虚偽の記載をした書面は無効であると主張しその確認を求めるので按ずるに、法律関係を証する書面につき確認の訴の利益があるのは、該書面の成立の真否が確定されて、換言すれば、文書が真正に成立したか或は偽造又は変造されたかが確定されることによつて、原告の法律的地位の不安定が除去される場合に限られることは民事訴訟法第二百二十五条の規定により明かなところ、原告の右主張によれば、原告は右書面の成立即ち作成名義人である被告がその権限に基いて作成したことを争うものではなく、たゞ同書面中「更に再調査致しました」とある部分が事実と相違する虚偽の記載であり、ひいては、該文書が無効であるというのであるから、書面の真否確認を求めるのでなく、その文書の法律上の効力の存否の確認を求めるものであつて、この請求は確認の利益を欠くものといわねばならぬ。けだし文書が有効又は無効ということは、その文書によつて証明すべき法律関係の存否ないしは効力に関することであつて、文書自体は法律関係でなく一の事実関係にすぎないからである。従つてかような場合にはその法律関係自体について確認を求むべきであつて、事実関係についての確認は前記法条所定の場合以外には許されないのであるから原告の右請求は権利保護の利益を欠くから不適法としてこれを棄却すべきである。

次に原告の罷免の請求について考えるに行政事件訴訟の裁判において裁判所は行政処分の適否の判断をなし得るに止り、行政庁に対し或る行為(作為、不作為)をなすことを命じ、又は行政庁のなすべき行為を自ら代つてこれをなすに等しい裁判をなすが如きは、司法権の範囲を逸脱するものであつて、特にこれを認める明文の規定の存しない限り、これをなし得ないと解すべきところ、憲法第十五条の規定は国民主権主義の原則の公務員制度における一つの表現に外ならず、直接国民に各公務員を罷免する権利を設定したものでない。このことは国民が直接選挙した公務員についてさえも、いわゆるリコール制を採用していること(地方自治法第八十条、第八十一条、第八十六条)と国家公務員法第三章第六節及び地方公務員法第三章第五節にその地位の保障に関する規定のあることによつても明かである。他にこれを認める明文はないから原告の右請求は不適法として却下を免れない。よつて民事訴訟法第八十九条を適用して主文の如く判決する。

(裁判官 三宅芳郎 浅賀栄 加藤宏)

(別紙省略)

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